"大中華" 第三部 戦闘にて思ふ



祖父は、開戦のラジオを聞いていたとき、おっ、遂に始まったか・・・と思っていた。 
「このラジオは一回だけ流れたんじゃなくて、その日に何回も流れたから、何回も聞いたんじゃ(笑)」

「これを聞きながら、嫌だなぁという雰囲気だったの??」

「いや、そんなことは無い。 こん時は日本が一番活気があった時じゃ!! そりゃもぅ凄い活気だった! おー! やりよったな!!って印象が一番強かったよ。 イギリスの軍艦は1発で沈めるわ、真珠湾はガチャガチャにするわ・・・ そりゃー爽快だろ。 まぁ、この時は戦争ってものに対して、疑うものはそこまで居なかったと思うんじゃ。 実際に戦地に行くまでは、戦果を聞く度に、よっしゃー!って気になるんよ。 国全体がな・・・。」

へぇーそうだったんだ・・・と聞いている僕に、じいちゃんは続けて言った。「それからっちゅーもの、早かったぞー。 バタバタと軍に入ってな・・・軍隊生活にも慣れてきたら、それ!!中国へ出撃じゃけ・・・」

僕はじいちゃんに聞いてみた。 「その時、どんな気持ちになった??」

「どんな気持ちって・・・一番最初に直感的に思ったのはな、もう帰れないと思ったよ」

「それは、生きて帰れないと言う事?」

「いや、出発のときは、そういう意識はまだ無いんじゃ。 これは長い戦いになるぞって気持ちだよ。 とてもすぐに終わるなんて考えられない雰囲気だった。 そういう大きな勢いというか、まぁ・・・大きな流れの中でみんな戦争に出かけたって事だよ。 疑うことも無いという部分は、みんなが兵隊に行くという大きな流れと、戦果による大きな高揚があったという・・・そこだよ。」

祖父が、作戦の地に着くと、先に任務を行っていた先輩歩兵部隊が大喜びして迎えてくれた。 何故なら、祖父たちが来ることによってその部隊は帰国できるということだったらしい。 しかし戦局が変わり、先輩歩兵部隊に「帰れない」という通達が来ると、彼らは、いままで優しかったのに突然態度を変えて冷たくなった。

「薄情なもんじゃ、自分らが帰れるから俺たちに優しかったんだよ。 だんだん・・・っていうか、まぁ露骨に機嫌が悪くなっていくのが分かって可笑しかったなぁ・・・(笑)」

「みんな帰りたい気分なの?」

「そりゃ、帰りたいにきまっとる!! 別に死にたくないし、人も殺さんでいいなら、殺さないほうがいい! 当たり前のことじゃ。 ただな、兵隊っていうのは、やっぱり人の集まりじゃけ、この野郎と思う上官もおれば、忘れることの出来ない恩義を感じる人に出会うことも多かった。 人殺しだけじゃなく、こういうのもひっくるめて戦争じゃ。 人の集まりが一緒に動くんじゃ。 一個大隊ってのは800人おるんじゃ、一つの作戦の中で2個大隊〜4個大隊が一緒に動くじゃろう? その中に人間のドラマというのは必ず生まれるな。」

「仲間とのドラマ? 敵兵とのドラマ?」

「仲間とは、沢山のドラマがある。 今も思う、世話になった人の名前と住所を一人ひとり聞いて、手帳に残しときゃよかったってな・・・。(笑)」

「そんな余裕があったの??」

「まぁ、ひとつはそういう精神状態じゃなかったという部分があるが・・・。 俺は戦争しながら、自分はサムライだと思っていた。 勿論無駄な殺生はいかん。 ・・・しかしな、こんなことがあった。 俺たちの陣地のな、兵舎の上に現れた中国の爆撃機が頭の上を低空飛行してきたんじゃ。 そのときは、みんなで飛行機に向けて鉄砲をボンボン撃ったよ。 そしたら、近くでドカーーーーーーンって無茶苦茶な爆発音がしたんじゃ。」

「どうしたの??」

「おい!! 作戦本部がやられたのじゃないか!?って叫んだ後、俺らは真っ青になっとったんじゃ。 すると驚くことに、奴ら(中国国民革命軍)は誰も人がおらん空港を爆撃していきおった・・・。 空港には六畳一間くらいの穴がボコーーーッと空いてな!! しかし、あれだけ低空飛行で兵舎を確認しとるんじゃけぇ、俺たちを爆撃するじゃろ?? 普通だったら・・・。」

「何で、空港を・・・」

「いや、それは分からん未だに・・・ ただな、一ついえるのは、奴らも俺たちを無駄に殺しはしなかったっちゅーことじゃ」

祖父にとっては、中国人が戦時下に於いても「道」というものをしっかり持っているということがハッキリ確認できた出来事だったのだ。

つづく。

"大中華" 第二部 もんじ

祖父は寒い冬に広島から汽車に乗り、朝鮮半島経由で戦地中国に降り立った。 街に掲げてある看板の書体を見て、中国人ってこんなに綺麗な文字を書く奴らなのか!!という印象だった。

兵隊に入る前の祖父は学校の教諭をしており、その中でも達筆という事で、筆が必要な場面ではいつも借り出されていた。 そんな達筆で成らした祖父を唸らせた中国の書体・・・。

「俺は、あの時思ったんじゃが、こんな立派なもんじ(文字)を書く奴らと、戦いたくねぇなって・・・(笑)」 祖父は、作戦の地に向かう船に乗りながら、中国と戦争しちゃいかんなぁ・・・とばかり思っている。 

当時の船のトイレは個室ではなく、数メートルある丸く細い木の棒が二本あり、その上に腰掛け、棒と棒の間から溝の中に用を足すという仕組み・・・。

「仕方ないんじゃろうけど、どうしてもあの仕組みは・・・俺はどうも好きになれんでな、恐らくあれは中国の船じゃったと思うが、あんなのじゃ出るものも出らんわな!!」 (suuの潔癖症は祖父と母譲り)
しかし何日か船に乗らないと作戦の地には着かない。 そんな中、祖父は何度も凍てつく甲板の上で用を足し、戦地への到着を複雑な気持ちで待っていた。

戦地に着けば、当然のように戦闘の日々・・・。 倒れて息絶えている敵兵を眺め、その兵士の持ち物を触っていると、コロリとブリキの弁当箱が出てきた。 祖父は、「アンタは飯を食う前に撃たれたのか・・・」と言いながら合掌し、その弁当箱を開けてみた。 中身は白米の上に唐辛子の粉が振りかかっただけのものだった。 こんな貧しい飯を食いながら戦ってるなんて・・・。

祖父は、しみじみと言った。 「中国と戦争して思うのは、あんなにのんびりしてて、カワイイ奴らがさ、兵士になると必死でな、しかもどんな死生観かよくわからんかったが、笑いながら死ぬんじゃ。 あの美しい目で自分たちの国を守ろうとしている姿が忘れられん。 それが浮かぶんだよ。」

祖父が戦争中から一貫してイメージしているのは、中国人の文化は凄く偉大なのに、人はみんなカワイくて憎めない性格だということだ。 祖父は心に決めた。 戦争というものは仕方ない。 しかし俺はこの国の人たちを1人も殺したくない・・・。 むしろ、無駄な殺生が起ころうなら、身を張ってでも止めよう。 それがサムライの道じゃ・・・。 中国の兵士は戦闘服を着ていない場合もあり、ゲリラ的で危険だというマニュアルもあった中、階級も高く、隊の中での責任も重い祖父は「殺さない戦争」という一番難しい道を選んだ。

つづく 

次は 「戦闘にて思ふ」

"大中華" 第一部 マントウ

我が国の中で露骨に嫌われ始めた中国であるが、「嫌いだ」と公言している人の中で、どれだけの人間が中国と生身で触れ合ってきたのだろうか。 そしてどれだけの人間が、本気で中国人と喧嘩をしてきただろうか・・・。 

人から聞いた話や、国内で流れる偏った報道を理由に中国を簡単に「嫌い」と言い放つのは安易過ぎるし、危険だと感じている。 

我が国の特に若い世代に対し、もう一度自分の頭の中で、中国というものを考えていただきたいという願いの中、このシリーズを書くことにした。


■■■大中華■■■


先日は祖父の誕生日だったので何か送らないと・・・と思い、考えたあげく、祖父が日中戦争時代に大陸でよく良く食べていたという「マントウ」を送ることにした。 マントウというのは、小麦粉で出来た生地を蒸して作る食べ物で、中国大陸ではポピュラーな食べ物だ。

我が国に存在する一番近いものは、角煮饅の「饅」の部分だろう。 ほんのり甘くて真っ白い小麦の蒸しパンの部分。 

今日、祖父からお礼の電話が来た。 色々話している中で「ところで、送ってくれた肉まんだが、全く具が入っていないのがあったぞ」と言い初めた。 

「じいちゃん・・・それがじいちゃんがいつも話してくれているマントウじゃないの!?」と言うと、「俺が知っているマントウとは少しだけ食感が違う気がする・・・なるほど、そうだったのか、すーちゃんは俺にマントウを送ってくれたのか」と言いながら笑っている。

祖父は日中戦争時代を思い出しながら「当時はこのマントウのように"ふんわりふかふか"したマントウじゃなかったなぁ。 もっとモチモチして、もう少し堅かったような気がするんだ・・・」と言っている。 恐らく当時は材料があまり良くなかったので、そのようなマントウしか無かったのだろう。 しかし若き日の祖父にとって、そのマントウこそが格別だったらしい。

「出来立ての湯気が立つマントウをな、マントウ売りが竹のヘラで真ん中に切れ目を入れるんだよ。 そしてその中に匙で黒糖を入れ、モミモミするんだ。 それを食べていたんだ。 本当に美味しかった・・・。」

祖父のマントウに対する思い入れは凄く、祖父のケータイのメールアドレスにも「マントウ」と入っている。(笑)  長い間、敵国で明日の命も分からず過ごした時間、そしてそんな日々の中で味わった忘れられない味・・・。 

祖父は不思議なことに、中国と戦争していた世代なのに、全くアンチ中国ではない。 あれだけ殺しあった世代なのに、むしろ中国を尊敬するような発言が多い。 

なぜだろう・・・。     つづく

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