ルーマニアの少女



ダンケの袋を持って、ホテルのフロントを通り過ぎようとすると、こういう時に限って・・・フロントの女性がニコニコしながら「今日は何を買ったの??」って聞く。 

そっか・・・ホテルに戻ってくる都度、この金髪女性に買ってきたものを見せびらかしていたから仕方ない。 そういえば、昨日の夕方、買ってきたビール瓶を突き上げて「チュース」って言ったり、不味いフランクフルトを食べたとか、言葉が通じないのがストレスだとか、俺は「カイト」だとか・・・色々とドイツでの苦悶している僕の心の叫び?を聞いてもらっていたからだ。

するとフロントの女性はシャリシャリと勝手に袋を触りはじめ、ついにダンケの頭が覗いてしまった・・・。 嗚呼 今、赤面マックス状態だ。 30過ぎた男がぬいぐるみを買うなんて、どーかしている。 間違いなくどーかしているでしょ・・・。

フロントの女性は凄く跳ねた声で「カワイイ♪」と言いながらダンケの頭を撫でている。 バレてしまった・・・仕方ないな・・・僕は彼女に対して妙に素直になり「寂しいから買ったんだ」と言った。 しかし彼女はそれに対して何も言わず、嬉しそうな顔で僕の目を見ながら「とてもカワイイから、今から名前をつけよう」と言い始めた。

「いや、もう名前はつけたんだ」
「それは日本語で??」
「いや、ドイツ語でつけた」
「ドイツ語しゃべれないのに・・・」
「昨日インターネットしてたでしょ? あれでベリー少しだけ出来るようになった。」
「名前は何??」
「彼女の名前はダンケ」
「雌犬なの??」
「そうだけど・・・」

何故かここでフロントの女性は大爆笑しはじめた。 

???? 何が・・・そこまで・・可笑しかったのかな??

さっぱり分からないが、涙を浮かべて笑っている。 かつていろんな国の人を笑わせてきた。 しかし今回は完全に"笑われてしまった"感じだ。 目と鼻を真っ赤にしながら接客に戻っていくフロントの女性・・・ 僕は部屋にダンケを置き、また外に飛び出して行った。

しかし、何があそこまで楽しかったのだろう・・・名前が"ダンケ(有難う)"で"雌犬"ってところが恐らくストライクだったのだろう・・・。  ドイツのツボはまだ分からんなぁ・・・


腹が減ったので、飲食店の中を覗き込んでいる。 何だ?? ブロッケンと書いてある。 ブロッケン??いかにもドイツ的な言葉だ。 キン肉マンに出てくる正義超人にブロッケンjrってキャラがいる。 ブロッケン!! カッコイイ!! 

ブロッケンが食べたい!! ブロッケンが食べたい!! ブロッケンが食べたい!!  

ロップ!! ーップ!! (節子!! それは、おはじきやで!)

ソーセージ屋のオバサンは野獣のような顔をしている。 恐らくマカナイで毎日ソーセージばかりを食べているからこんなブロッケンな顔つきになったのだろう。(ブロッケンな顔つきってどんな顔だよ・・・)

僕が「ブロッケンをくれ」と一言言うと、オバサンは「これら全部ブロッケンだ」というジェスチャーをする。 参ったな・・・この店の全てがブロッケン現象なのか。



ソーセージにはケチャップとマスタード、そしてカレー粉がかかっている。 カレー粉か・・・これは発想したこともなかった。 美味そうだなこれは。 バリッ モグモグ・・・

ぐぅああああああ!! 此処でやっと本場のドイツを味わってしまった・・・。 これは本当に美味い!! 美味すぎる。 本場ドイツのソーセージって、ここまで凄いのか・・・。 これは・・・もぅ、神です。 神以外の何者でもない。。。

口の端に少しケチャップとカレー粉の味がしている・・・。 そしてまた、テクテクと石畳を歩いている。 

あれ、アコーデオンの音がするなぁ。 ビルとビルの間に座り込んで水色のアコーデオンを弾いている小汚い少女がいる。 その少女が弾く曲をずっと聴いている。  ああ、"♪パリの空の下"を弾いているんだな・・・。 

この少女、かなりテンポからなにから無視して弾くので、初めは何かわからなかった。 そこスタッカートだろ・・・ああ、そこ繋げちゃだめだよ。 そこはちゃんとラルゴで弾けよ・・・ あーイライラするこのガキ!! ちゃんと楽譜見たことあるのか??

シャンソン中毒の僕は、聴いているうちに口を挟みたくて仕方なくなってきた。 僕は彼女のアコーデオンケースの中に2ユーロ硬貨を入れると、彼女は驚いて演奏をぴたりと止めてしまった。 おいおい、どーしたんだ?? 恐らく2ユーロはこの子にとって大金だったのかな・・・。 眉の繋がった彼女は「有難う」とドイツ語で言い、まだずっと僕の目を見ている。 

この子は綺麗な服を着て眉をちゃんと整えれば凄い美人になるな・・・。 よく見ればまつ毛が長くて美人顔だ。 僕は「さっきからフランスのシャンソンをプレイしているけど、ピアフが好きなのか??」と聞くと、「ごめんなさい、私は英語が出来ません」と言っている。

「何人だ?」と聞くと「ルーマニア」と小さな声で言った。 ルーマニアっていったらルーマニア革命とチャウシェスク大統領のイメージだ・・・。(公開裁判・処刑の後、この国の人々に更に苦しい日々が待っていたという、皮肉な運命の国である)

ルーマニア人とは・・・。 しかし、2ユーロで足りるだろうか・・・親切でお金持ちの人が沢山お金を入れてあげればいいのに

僕がお金を入れたからに違いない。 近くに居た人々が
少しづつお金を入れ始めた。 

ふと昔を思い出した。 韓国で生活に困った靴拭きが僕の汚れたブーツに飛びついてきたとき、僕はその人を振り払った。 その当時はファッションで、ブーツを汚していたからだ。 後で反省したが、旅先で出会う人と自分の境遇があまりにも違いすぎて、その場では瞬時に分からなかったのだ。

あれから10年以上経った。 僕も30代になり、だんだん人の痛みが分かるようになってきたのか・・・それとも偽善の心を恥ずかしげもなく出せるようになっただけなのか・・・。

そのアコーデオンのメロディが音を変えた。

さっきまで下手くそ!!って思っていたのに、ルーマニアだと聞いただけで・・・ やっぱり僕は偽善者なのだろう。 ふんぞり返ってルーマニアの少女に同情しているだけのクソ野郎だろう、きっと。


僕が尊敬するドイツ人、ニーチェはこう言った。 十分に自分自身を支配する力がなく、絶えざる自己支配・自己克服としての道徳を知らない人は、無意識のうちに善良で同情的な情動の崇拝者になってしまう・・・と。

ただ、ただ、アコーデオンの音はなり続ける。 

そしてその音が、自分の内面をどんどん掘り下げていくのがわかる・・・。 人は知識でモノを見て、やがて自分に絶望した後、心が真理みたいなものを求める・・・。 真理なんて捉えどころがないのにね・・・。 これから自分が何を思うか、そして何を知ろうとし、何をするか・・・。 薔薇色の混沌と自分との激しい戦いの上で、スーパーサイヤ人になれるのならば、なってみたい気がする。

みけんにシワをよせながら更に石畳を歩くと、今度はソ連の旗を持ったおじさんがいる。 何故か歩いている人々を静止して必死に何かを訴えかけている・・・。 恐らく、見るからに共産主義に戻りたい人だろう・・・。 本当に今のままでいいのか??と語りかけているように見えるのだ。 

さっき見たルーマニアの少女とそのおじさんの行為が重なり、東欧という輪郭がこれでもかというくらい今、目の前で見えている。 そうだな・・・東ドイツは特に厳格な「お東」だったからな・・・。

今のままでいいのか・・・?

全く分からない。 全く分からないが、人間の幸せというのに共産主義も民主主義も関係ないという事だけはよくわかる。 そして、正義感なんてものがこの世に存在しない方がいいという事・・・。(善行と正義感は別物) 20代の後半で中国を歩き続け、今は旧東欧州を歩き、分かったのはそれだけだ。


結局はしかないのよ。 

神に愛を込めて言いたいことは、んだ!っていう実感だ。(神に愛を込めてね・・・
) 

ああ、明日チェコに戻ろう。 ドイツは本当に勉強になったよ。

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