パリとは・・・

タクシー飛ばせよもっと・・・間にあわないよ!!  いや、まてまて。 このままではダイアナになってしまう。 ゆっくりでいいよムッシュー。(どっちだよ)

タクシーは女性の家の前で停まった・・・。 2分くらい過ぎている・・・。

教えられたとおりにインターホンを操作して・・・。 

ブーっ

「こんばんわーちょっと遅れてすみませんでした〜」

「(インターホンのマイクから)入ったら右にエレベーターがあるのよ。 2階だからそれで上がってもらえないかしら」

エレベーターを降りると扉が半開きになっており、まるでモデルみたいに腰に手を当てた女性が斜に構えて我々を見つめている・・・。  おお、美しいマダム・・・。

しかしなんて豪華なマンションだ・・・。 一等地・・・ しかも歴史ある建物。

「どうぞ入ってらっしゃい。 あっ、荷物はここに置いたほうがいいわね。」

荷物の置き場所を指定され・・・「あなたたち、手を洗いたいんじゃないかしら??」 手を洗ってくれということだな・・・ジャブジャブ・・・。

部屋にはあちこちにアロマキャンドルが何本もつけられており、アジアンテイストな家具や書が並んでいる。 

これはヤバい・・・何かの宗教か・・・?


僕も河崎君もとっさにそう思ったのだ。

しかし、待てよ・・・ここフランスはカルト宗派に厳しい国だよな・・・。 あまりにもいい香りのハンドソープ・・・手を洗いながら思った。 まぁ、どんな事が起ころうが切り抜けるスキルくらい持っとるわい・・・。  

思い出す19の頃、田舎のヤ*ザの事務所に呼び出されて正座させられ「殺すぞ」って脅されたことがあった・・・ ああ、あの時は何も切り返せず黙り込んだ・・・。(あの時は僕も悪かったんだけど・・・)しかし今の俺は違う。  韓国と満州で充分な修行を積んできた・・・。  そう、昔の俺じゃない。

あれっ、足元に一匹の猫がまとわりついてきた。 丸々とした目でこちらを見ている。
なんだ・・・カワイイなぁ。

「バーナビー!! こっちにいらっしゃい!!」

ああ、バーナビーっていう猫なのか・・・。 女性は一生懸命料理を作りながら、「バーナビーっていうのはフランス語でワサビっていう意味よ!!」と教えてくれた。 

僕たちは広い部屋に通され、高級なソファーに座り、窓の外の赤いゼラニウムを眺めている。 7時を過ぎているのにまだまだ陽が暮れる気配がない・・・。 ああ、なんだかこんなにいいソファーに座っているのに・・・ 全く落ち着かない感じだ。  場違いな場所にいるような感じで・・・ 真空管のオーディオから流れるのは清らかな「アベマリア」・・・。 

なんて雰囲気だ。 今まで味わったことのないこの緊張感・・・。

部屋の片隅には祭壇のようなものがある。 香炉ではなく、青磁の茶器などを使っており、僕が見慣れている儒教、道教の祭壇ルールとは全くかけ離れている・・・というよりも・・・これは祭壇ではなく、ファーイーストチックなオブジェだな・・・。 

なるほど・・・この方はカルト宗教ではないな・・・。


ニャー。


バーナビーが僕に頬擦りする・・・この猫はブリティッシュショートヘアーという種類のネコだ。 顔が大きく、動きがゆったりで落ち着いている。 ああ、なんて可愛らしいのだろう。

僕は女性の真似をして「バーナビーこっちにおいで!!」と言ってみた。
しかし目線すら合わせず、こっちに来る気配も無い・・・だから猫は好きだ・・・。

女性が白い皿に何かを盛って来た・・・んっ?? 何だろう??

キッシュじゃないか!!  いゃあ・・・これは本当に美味い。 女性は「日曜日はお酒を飲まないのよ。 だから今日はワインを切らしているの・・・」と言いながら、フランスのビールを注いでくれた。 

コイツは・・・「クローネンブルグ1664」だ・・・。 お味は、ハイネケンより少しライトな感じだろうか・・・香りはそこまで高くなく、喉越しもドイツビール程はない・・・。 よく考えれば、フランスはドイツが嫌いな国だから・・・ビールの味が最高でなくても仕方あるまい・・・。 日本人がいつまで経っても美味いキ ムチを造れないのと同じだ・・・。  文化やその背景愛さないと、いいものは出来ないのだ。(何を偉そうに・・・)

かつてフランスの北東部で「アルザス」という地帯がドイツに占領されていた頃、此処フランスにビール醸造が根付いたらしい。  アルザスといえば比較的辛口の白ワイン生産地で有名だ。  またそれとは逆に、ドイツ南西部(アルザス寄り)のバーデンという街は、ドイツにおいて最大のワイン生産地である・・・。

最近は国境をまたぎ、アルザス(仏)とバーデン(独)の生産者同士が共同で作ったフュージョン「特別銘柄ワイン」まで現れるという珍事まで起こっている。

ワインのボトルには必ず国籍が書いてあるのだが、何と書いてあるのかが気になる。「フラマニー」だろうか「ジャランス」だろうか…。

次の料理はアヒル肉のサラダだ。 河崎くんは「なるほど、アヒル肉にバルサミコの味だけで・・・凄い!!」と言っている。 そしてさらに茎が付いたままの緑色の木の実が大量に入ったサラダが続く。

僕があまり量を欲しがらないので、女性は河崎君に山のようにサラダとアヒル肉、そして緑色の実を入れる。 河崎君はクローネンブルグを沢山飲んでいたので、次々に盛られる野菜に対して顔が「もう腹いっぱいだよ・・・」モードになっている…。

河崎君は木の実の"茎"をグラスの近くに静かに置いていた。  すると女性が一言。


「その茎はコースターの上に置いたほうがいいわね。」



さすが上流階級!! マナーに厳しいぞ!!!。(笑)



次はナスビだ…。 ナスビほぼ丸一本…。 お腹破れちゃうよ…。
しかし、これは美味い…。美味いぞ。 オリーブで程度よく揚げて、塩と何かのエキスで味付けされている。

日本では、[フレンチはソース文化だ」と言われている。 この国には定番のソースでもマヨネーズを筆頭に200種類近くあるらしい。(恐ろしい)

果たして、本当にこの国はソース大国なのだろうか…。 いや、待てよ。

それよりもっと感じるのは、素材の味を引き出す料理法だ。 さっきのサラダにしてもそうだ。 ドレッシングなんか殆どかかっていない。 適量なオリーブオイルとバルサミコだけだ。

ひょっとしてこの国の料理は、野菜の味で勝負してないか・・・??
この国は農業国だったのか・・・ということをはっきり認識し始めた瞬間だった。

女性はおにぎりも作ってくれた。 ひょうたんの形をした可愛いおにぎり。 

河崎君は女性の正体を暴こうと、さっきから巧妙な話術で女性に罠を仕掛けている・・・。 河崎君の興味は「そこ」にあるようだ。 女性は依然、自分の正体の核心に触れようとすると、するりとかわす・・・。 分かったのは、娘が国際弁護士って事くらい・・・。

女性は断片的にではあるが、ついに昔の自分の事を語り始めた。

「30年前かしらね・・・私は日本に・・・まぁ嫌気がさしたっていうか、その当時は少なかったんだけど、フランスに一つの希望を抱いたわけよ。 そして誰もが反対する中、この街にたどり着いたわ。」

カッコイイ・・・。

「そしてそして??」 僕は目を丸くして聞いている。

女性「貴方たちもこの街に来て色んなものを感じて行けばいいわ。」

僕「僕たちはこの街に来て、今日本当に心臓を掴まれたような気分になっているんです。 つまり、パリをナメていました・・・。」

女性「そう・・・ところでアナタたち、これからどうするつもりなの??」

河崎君「二日後にベルギーへ行きます。そして次にアムスに行く予定です。」

女性「ベルギーまではいいのよね・・・。でもオランダになってくると、なんとなくゲルマンゲルマンしてきて私はなんか嫌だわ・・・。

なんとなく分かる。ベルギーを越えると、プロテスタントが多くなってくるしなぁ。
カトリックに比べてプロテスタントは質素な食事を好む。 グルメで食いしん坊のフランス人にとっては食の不毛地になるからかなぁ・・・。  

それとも、ただのフランス特有の感情的なゲルマン嫌い?? ラテンなら、まぁ受け入れるけど、ゲルマンには反吐が出るというプロイセンから続く恨み・・・。 

ゲルマンとの「境界線」をハッキリ感じる一言だった。

気が付くと窓の外は日が暮れ始めていた。 3時間くらいここに居るんだろうな。 夕焼けが反射する隣の建物・・・。 日本の夕暮れとは違う、黄色に紫が混じったようなエレガントな夕焼け。


やがて完全に日が暮れて、女性と僕たちはろうそくの光だけで会話している。 この女性との、楽しくたわいもない会話の中で感じたことがある。 


それは女性から漂う、心を引き裂かれるほどの「郷愁」の念だ。


僕も韓国に憧れ、青年期のほぼ全てを韓国に捧げたといっても過言ではない。 この方も同じなのか・・・ 全てを此処、パリに捧げたのだろう。 なのに女性は何故こんな目をしているのだろうか・・・。 何故こんなにも我々を愛しげに見つめる目をしているのだろうか・・・。

僕は幸い、韓国という隣国に興味を持ち、日本の汚い部分も、よい部分も全てが見えてしまい、日本での生活にメリハリが出た・・・。 


しかしフランスは遠すぎる・・・。  遠すぎるよ・・・。



日の暮れたパリを河崎君と歩いてモンマルトルまで帰っている。 河崎君との会話はあの女性の「心」についてだった・・・。

何故か僕たち二人は、同じ事を感じていた。 潰されるほどに偉大なパリと、実はそれに決して負けていない・・・


我が祖国の真の魅力・・・。


ああ、パリよ・・・この街は我々に何を言いたいのか…。


suuちゃんはこれから一年後に、この女性と何度も連絡を取り合い、日本で一緒に「ほのぼの旅」をするほど縁深くなってしまいました。 

やはり思うのは、人間って年齢ではないな・・・という事。 確かに年齢による経験値や社会的地位はベラボーに変わってきますが、最終的には「何を感じ、何の為に生きているか」という魂の部分になってゆくんですよね・・・。 その中で、この女性とsuuちゃんは何かしら通じ合うものが多いのか、年齢を超えた親友、そして師匠になってしまいました。

プライバシーの為、書くことが出来ませんが、実はこの女性・・・フランスでも日本でも「超」お偉いお方だったのです・・・。 あまりにも恐れ多いのでこの辺で・・・

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